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Gallery Ari

Daphne’s Children

  • woodcutari
  • Dec 3, 2016
  • 13 min read

Updated: Jun 29


詩・画 ナカムラアリ



目次




ダフネのこども


朝もやの 
ひんやりとした 
むこうがわ
よりそい いのる
ダフネのこども
空も種も 違えども
きっときみらは
ダフネのこども

*画像・キッチンの窓から、熊笹を刈り取った野原にひっそり咲いたチューリップが見えた。



7ころび 7.5おき


いつもの銀テープを買いにいったら 
すっぽりと廃盤になっていた
だから 銀色を使うのは最後かもしれない
いつものポスターカラーを買いにいったら 
すっぽりと廃盤になっていた
画学生も 
もうポスターカラーの時代じゃないんだ
あの粉っぽさや 
いつまでいてくれるか判らない色調の
危うさが好きだったのにさ

頑強な すばらしい色は すばらしい値段・・・・

・・・・

「ごはん粒ひとつぶには、平均的な成人が階段を1段登るエネルギーがある」

それなら、半粒だったら。。。?


387年前、お兄ちゃんと、半粒のご飯を食べた人が

階段を登りたいのに登れないマネをして笑った


大人の気力は、足りない半粒を補うことができるのだろうか?


制作は やっぱりいつもナゾナゾから始まるんだ。。。


*画像: 制作中作品「ダフネのこども または ちっぽけな希望」2010.5.24



ピニャータとバナナ色のくまの特権


ぼくは イースターパーティように 
ピニャータを つくってる
さいきんの 新聞紙キりきざんで
おコメとシオでつくった のりつけて
しんみょうに つくってる
せつない記事は イースターにボコボコにされて
そのなかから ぽろぽろと
たのしいオカシが こぼれるはずだ
ちいさな こどもも 
おおきくなりすぎた こどもも
きっと とってもヨロコブぶだろう♪
だから あとでシロくぬられて 
いろいろカザられて わかんなくなるけれど
ぼくは いま しんみょうに かさなる新聞紙の
アツサかげんみながら つくってるさ

(ぁぁ、満月の次の日曜日がたのしみだ・・・)


*ピニャータ(piñata)は、メキシコ発の子供のお祭りに使われるくす玉、中にお菓子やおもちゃなどを詰めて、日本のスイカ割りのように楽しむ。これは、東北震災の記事で作った。



ゆめ


こわいゆめからさめ
ふろんてぃあすぴりっと 
かきあつめてみた
かきあつめたところで 
絵にかいた餅のようで・・・くしゃん
グレーのそら 卯月の雪
ふろんてぃあの道に
のろのろと走る選挙カー
きょうは・・・
大草原の小さな家 読んでねむろう

画像* イースターにボコボコにされる予定の完成したピニャータ・開拓精神を思った日



クロッカスと春タム


ゆきがトケタ 庭土に 不思議な穴が空いている
何個か 空いていて・・・
怖いから 混ぜるな危険のパイプスルーをタラシタ
潮風が濃く こちらにとどく前に
ムシムシ大行進がやってくるんだね
春風は 強く 痛痒く 
隣庭のクロッカスを際立たせる
なんと清廉にみえることよ・・・

晒粉(さらしこ)をかけたような、かすかな薄紫 大丈夫、隣とはかなりの距離と擁壁があるから あの子たちは 平気


太ったイースターバーニーが 耳を隠して 太鼓をたたく

春風に 負けないほどの波動を 僕らに届けるんだ

トントンティンタ トンティドン♪

地面からいきなり花をつけるクロッカスに負けないほど 強いんだ

トントンティンタ トンティドン♪

撒ききれなかった塩素を深緑のジャケットにタラシタ

ボクは シミの様な模様を期待したのに 深緑はビクとも しなかった     

えっ・・・

春風は 強く 痛痒く 隣庭のクロッカスを際立たせる            

なんと清廉にみえることよ・・・

トントンティンタ トンティドン♪


画像*2015のイースターエッグと春待ちのベランダ



こなた裏庭にシイの木ありけり


まったり初夏 こなたうら庭 こもれび いとみやび 
しんりん浴とオゾン浴 みちみちて ふかし
きおん18ど 麦酒ぬーんの まちきれなさよ
つもる雑用 ぬぐいておかし
(塗りそこねフェンス/のそのそバラから伝ってくるヤツに/
 ァァ 気付いてしまった /だから 悲鳴をあげたでしょ/
そしたら怪獣みたなソイツが/
頭を持ち上げて/あたしを威嚇したのよ・・・
マイマイガ幼虫大発生の恐怖)
おもて庭 わすれ    しんこきゅう


空がおもくても


空は、かるくかるく ふありと 
ふぅぅぅあぁぁっと ひろがっていてほしいのに
おもえば  ほらね とか
うぁっーーーと とか   どしりどじぃぃ とか
青だって 赤だって グレーだって 黒だってさ おもいのよ
ふありっていうのは ほんの一瞬 ももいろのとき

季節はずれに 桜餅を食べたがる君が
おもい空を

いつまでも飛べることが 信じられないような体重の ヒコーキで 飛びきって

さっぱりとした地上絵のような 北の滑走路に

バウンドしながら たたき着いて・・・

スマホの電源を入れながら 蛇口から スルスル出る水みたいに

一列か 二列っぽく 到着ロビーに向かうとき

青いヒコーキが かるく雲に紛れようとしてるのを見る


あさって以降の目的は わすれてしまっても

明日は あの餅屋へ桜餅を買いに行こう

空がおもくても いこう♪



*近年の蝦夷梅雨に憂鬱で辟易していたときの詩・画像は我が表庭(おもてにわ)。北海道の桜餅は、本州での「道明寺」いつ食べても、かぐわしい春が来ると思える美しいお菓子だと思う。



ことり朝と雨


朝まいに 4時には
ことりが 5回鳴く
5回だよ
にわとりじゃなくって
     ことりなの

裏庭のシイノキに住んでいる

ことりは あくびするように 5回鳴くのかナゾなんだ 5回でぴたりと止まるんだ

雨足が強くなる  雨玉(あまだま)は、コンクリートにはねて

トロピカルフレーバーな音になる

庭にスチールドラムがあったらどんなだろう・・・なんて思っていたら

ことりが鳴いた 3回鳴いた

8時だった


画像*おもて庭コンクリートに降る雨



菖蒲香(あやめこう)百合かたむきの晩夏


地肌が塗ったように白い伯母さまふたり
エアコンが切れた
リビングで
ユリとシャム沈香を
混ぜたような
かおり扇子を

パタパタさせて 歌舞伎を見ている

ふたりとも ロッキングチェアに座ってて

扇子のリズムをツーテンポ遅らせ イスをゆする

絨毯の上のイスは じり・・・・じりりと 100インチ画面に近づく

伯母さまたちは 一滴もピンク色にならない顔から 汗をながしている

わたしには、伯母さまたちが巨大な白いキャンドルに見える

いまにも全部とけそうなのに・・・いつまでも崩れない

ちっとも いやじゃないふしぎな暑さ

眺めているのがおもしろい


伯母さまたちは、拳大のイチゴや イチゴ大のサクランボを食し

感動の場面では声をあげ つぎの瞬間に少しだけ自分の声にひるむ

今日は

ソバカス派はいない

鼻の穴にミントの葉を詰めてる光景もない


13時

とけきらなかった伯母さまたちは パウダーをはたいて車を呼ばせる

映画館へいくそうだ


残されたわたしは ひとり菖蒲香

新鮮な畳の香り足す



*菖蒲香(あやめこう)は、香道で夏に行われる組香。組香(くみこう)とは、ある一定のルールに即した香りの楽しみ方のひとつである。文学的要素から一般教養等、多種多様の分野に取材したルールに則って香りの異同を当てるもので、非常にゲーム性に富む。ただし、その本質は香りを聞き、日ごろの雑踏の外に身を置いて、静寂の中でその趣向を味わうことにあり、答えの成否、優劣を競うものではないとされる。



写生

君ね、

どうして、すきなところを すきなように 描いてしまうの?

この花は 以前
土に植わってて
根が付いていて
根は、
この茎を支えながら
地中から栄養をもらっていたよ

葉は、光合成しながら ここは、虫に喰われていたり

花は 太陽のほうを見ていたはずさ


この写生を見ていると

それが ぜんぜん出ていない


ボクの時間の写生はね

立体としての物理的な構造と

「物理」の対義語の「論理」と「科学」が優先するんだ

対象が切り花であってもさ


君の見たいところの事は すこし我慢して  

謙虚に取り組みなさい  


画像*渡邊貞之さんのプライベートギャラリーのキッチン



はじまりの鼓動


お腹につけられたドップラー心音計
ダッタンダッタンダッタン・・・勇ましいね
ダッタンダッタンダッタン・・・機関車みたいだね
ダッタンダッタンダッタン・・・何考えてるんだろうね
鼓動には
3拍子説と4拍子説もあるらしい
ダッタンダッタンダッタン・・・勇ましいね
ダッタンダッタンダッタン・・・機関車みたいだね
ダッタンダッタンダッタン・・・不意に汽笛がきたりして

左心房左心室右心房右心室 (さしんぼうさしんしつ うしんぼううしんしつ)

左心房左心室右心房右心室 (さしんぼうさしんしつ うしんぼううしんしつ)

ダッタンダッタンダッタン・・・勇ましいやぁ

          ***

定義したい数式は  

2拍子3拍子4拍子で合わなくなる  

ダッタンダッタンダッタン・・・なんだろ?  

f'=f\times{V-v_{\rm o}\over V-v_{\rm s}}  


(君は、もっと数学をやりなさい)7月5日の17時、先生に言われた  


画像*葉脈シリーズを組み合わせHeartthrob BeatsというタイトルでYouTubeで公開中のムービー2014制作



さんかくのシエスタ


ごはんに 三角のトーストを作ってもらって 小さな三角だから4つ食べました

ごはんがすむと お昼寝の時間だといわれて ベッドに連れて行かれました

ボクは 夜でもないのに 眠りたくないといいました

ママは 白夜だといいながら ビャクヤの話をしました

ボクは それを聞きながらなんとか

ベッドから抜け出そうと考えました

なのに・・・
なのに・・・・・
ボクは 眠ってしまった
まだ 夜じゃなくって 
すごいことがあったかもしれないのに
眠ってしまったボクは 
おきて すぐ 泣きました
ボクは 一刻もはやく 
お兄さんになりたいと思いました

*シエスタは昼食後のお昼寝の習慣、画像*シエスタ後の関係・部分



くるみ割り人形は最後まで読まない


夜がたのしいことは まぁ よくある
夜がチカチカすることも あるでしょう
でもこんなにもノスタルジックで
ゆめゆめのことは そうそうあるものじゃない
くるみ割り人形の本をベッドの中で読んだ日々
レモネードの川が流れる舞台で
夢見る食いしん坊が 神様にお祈りするんだ
この世界の夢を見せてください
いい子にしています

くるみ割り人形は 

口でクルミを割るんだねぇ 

たいへんなことだねぇ 

いろいろ反省しちゃうねぇ 


僕の中

葛藤と甘いもの

喧噪と静寂をもとめる


噛みとった芯は ほろ渋いクルミ

明日はタルト生地に混ぜ込んで オーブンへ入れるよ

魔法瓶のような北国仕様の部屋は しあわせの香りでいっぱいになるさ


こんな夜は・・・そうそうあるもんじゃない

そんな夜は・・・キミといっしょにいたいねぇ




画像* まだ一度もクルミを割ったことがない我が家のくるみ割り人形



なぞのルスティキ♪サンタニコラ


るすてぃき  るすてぃき  お お おぉお♪



女の子は サンタに手紙をかけません
なんにも 欲しいものがないからです
おくりものは サプライズじゃなきゃ
楽しくないからです

女の子は サプライズなおくりものに

いったい何度 喜んだことがありましょうか


リカちゃんハウスは お兄ちゃんにそそのかされて

物置の奥の奥で 確認してしまったではないですか


るすてぃき  るすてぃき   お お おぉお♪


それで サンタが来たよと サービスしたじゃないですか


立派な はた織機も スコットランドのお帽子も

ヒラヒラだらけのエプロンも 時計も 指輪も 首飾りも


ちょっと 違いましたね


あのこからの心のこもったカードと

マミメイドのりんごの瓶詰めが一番すてきに思えるのでした


瓶詰めには 手書きのラベルがありました

「りんごのコンポート・お客さまのデザート」


るすてぃき  るすてぃき   お お おぉお♪


この間 ラッパ吹きの弟と

灯油やガソリンの匂いが好きな話をしてました

ドイツ暮らしの長かった男の子が 不思議そうに聞いていました

「こちらの冬は寒いでしょう。鼻がツンとするような寒さの部屋で

灯油タンクに油を 注ぐんだよ。

あの匂いは、この先ボゥアッッと暖かくなる約束の匂いなんだ。

あたれる炎のもとなんだ・・・」

そうそう、そうなのですね。

的確に想像している男の子の表情と、あの寒さやあの暖かさを

宝物にしている弟がとてもかわいく思えました


女の子は その場にいなかった 女の子の女の子とお兄ちゃんに

手紙を書きたくなりました


るすてぃき  るすてぃき   お お おぉお♪



キタノトカイ・トナカイのつぶやき


吹雪がおさまった午後7時
アルマーニのショウウインドウに
ブルーのイルミネーション
都会は いいね
北の都会は もっと いいね
程よい人口密度でさ

分を保ち 夢をみる   

間(マ)が いいね   


大きなマグカップにあふれそうなクリーム 頼んでしまったココアにおどろく

どうやって ヒゲを作らないで飲もうかな・・・

北の都会は いいね

白いひげつきの大人だって いいさ

寒さで鼻が赤らんでも いいさ

間(マ)が いいね

北の都会は いいね


アノヒト・・・いいね



根は、いづこへと・・・・


ダフネの子おもふ。。。。
種が 空を舞い
風が ボクを運ぶだろう
僕は そこで幸せをつくりたいんだ
太陽と月と・・・キミらみんなと

画像*「ダフネの子ども」160×300㎝ 木版・和紙・アルミテープ・岩彩・アクリル

ダフネ/ギリシア神話で,月桂樹の前身とされる美貌のニンフ。



あとがき


 つい7年位前までは、私は創りだすことそのものに天真爛漫に取り組んでいたと思う。それは「自家受精」をしているかのような感覚だった。その後、肉親や子育てを含む人との別れや出会いを通して、時には感謝しながら、時には、わずらわしい尾ひれのように自分の「種」について反すうしていた。


 ある日、隣のおばさんがポプラの花粉症になった。キッチンから見えるフォンテンブローの丘のような風景は、おじさんが伐採した。少し寂しかったけれど、なだらかな丘陵には子猫が集まった。そして、ある日に真ん中に寄り添って咲くチューリップを見つけた。チューリップは球根で育つものと聞いていたので、野原の真ん中に咲く彼らがとても不思議だった。その時に、浮かんだのが「ダフネの子ども」であった。ダフネはアポロンから逃げて父に助けを求め、父はダフネを木にした。それが月桂樹であるとすると・・・もしかしたら、ダフネの子は尾ひれの一切ない、「子ども」なのかもしれないと思ったのだ。


 調べると・・・月桂樹は、ギリシヤ時代からアポロンの聖樹として神聖視された樹木。古代ギリシアでは葉のついた若枝を編んで「月桂冠」とし、勝利と栄光のシンボル。月桂樹は、銀杏の木のように雌雄異株で 葉にトゲがあるのが、雌の木だそう。


 ギリシアのエロスとアガペーは、きっかけと権威を結び付けて、物語は大いなる「種の保存」を現わしているのだと考えた。


 この詩集は、私の中でのまったくの素の「根」である。制作生活は自家受精ではないことを思い知ったのだった。 


2016.12.3 ナカムラアリ

(版画家・詩人・造形作家)



読んで下さって、ありがとう




ナカムラアリ詩集vol.17.

「Daphne’s Children」ダフネの子ども

発行日 2016.12.3.

発行所 sakura studio

Ⓒ2025 Ari Nakamura. 

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