Print Fair
- woodcutari
- Jul 6, 2014
- 10 min read
Updated: Jun 1
More Global! Love Print!

会期 2014年7月6日(日)
時間 10:30~17:00
会場 札幌駅前通地下歩行空間
ご来場のみなさまへ
1959年創立した北海道版画協会は発足以来、版画芸術の啓蒙と普及にも努めてきました。このプリントフェアは、「一緒に親しむことによって、お互いの発想のスキルや輪を広げていけたら」との願いから出発しています。
どうぞ、この展示やワークショップ(自由参加・無料)、ムービーを通して版画の技法におけるそれぞれ独特の「味」の楽しみや、会員個々の作風の成り立ちなどを感じていただければ嬉しいです。
大同ギャラリー(出口1直結)では、韓国現代版画家協会の方も迎えて「北海道版画協会55周年記念展」も同時開催中です。あわせまして、皆さまのご来場をお待ちしています。
北海道版画協会会員一同

版種別 よくある質問 版種(シルクスクリーン)
Q簡単な歴史
一般的にシルクスクリーンを遡るとステンシルが元になっていると言われています。ステンシルとは孔の開いた型紙の上から絵具、インク、染料などを塗り、孔の開いた部位の形(紋様、文字など)の絵柄を写し取る技法です。江戸小紋、伊勢型紙、紅型(びんがた)など捺染型紙を使用した日本古来の捺染技術(ステンシル)は広く知られています。明治末頃に絹の紗を張った捺染型紙が開発され、それにヒントを得た英国人サミュエル・シモンが1907年に絹のスクリーン印刷法の特許を取ったとされています。その技術の進歩に伴い、商業、工業、アートにと幅広く使われることとなります。特に写真による製版が可能になったことは、飛躍的な進歩につながり、シルクスクリーンの世界が一気に広がることになります。美術では1960年代アメリカのポップアートに代表されるアンディウォーホールの一連の作品や日本でも横尾忠則、靉嘔、草間弥生などがシルクスクリーンを取り入れた作品を制作しています。工業分野ではプリント回線など、シルクスクリーンのより高精度な技術の発展と共に多方面に応用されるようになります。印刷する材質、形態を選ばないという特性から、ポスター、Tシャツ、ステッカー、看板、サイン、その他身近ないろいろな日用品などの印刷に使用されています。
Qこの版を作るときの原画からの流れ
構想を練、原画を描きます。シルクスクリーンは色ごとに版下フィルムを描き分ける必要があるので使用する色と刷り重ねる順番を決めます。一般的に多く使われる写真製版の場合の版下フィルムの制作方法は透明か半透明のフィルムに紫外線を通さない濃度の描画材(オペークペン、漫画インク、ポスカ、等)で描く方法や、デザインカッターでアンバーフィルムをカッティングする方法等があります。色数分の版下フィルムを作成します。シルクスクリーンはセリグラフとも呼ばれ、版画や印刷技法の一種で版に絹が使われたことからこの名があります。現在では絹の代わりにテトロンやナイロンなどが一般的に使われています。仕組みとしては、四角い木枠やアルミ枠に、紗(テトロンやナイロン等)を貼り、紗の面にインクを通す部分と通さない部分(紗に目止め加工をする)とを作ります。これがシルクスクリーンの版となります。写真製版の場合は感光乳材を塗った版に版下フィルムを貼り付け紫外線で焼き付けます。感光していない部分を水で洗い流してから乾燥させると版の完成です。
Qこの版種の刷方と仕上がりの特徴
版上にインクをのせ、スキージと呼ばれるゴムベラを移動させ、のせたインクをこすり落とし、インクを通す部分のみ、版の下にある素材に直にインクが刷り込まれます。基本的に一色ごとの特色による印刷を得意としますが、ハーフトーンインクなどを使用してCMYKのカラー分解の印刷方法も可能です。特徴としては、他の印刷方法に比べ、刷り上ったインクの層が厚く、隠ぺい力があり、発色にも優れ、インパクトの強い印刷物に仕上がります。また、印刷する素材、材質、形態を選ばず、適性の感光乳材やインクを使用する事で紙・布・ガラス・金属・革・プラスチック、等のあらゆる物に直に印刷が可能です。(一部材質によっては、インクの接着しないものもあります)代表的な刷り方の特徴としてはグラデーションが美しいです。
Q何枚くらい同じものが刷れますか
基本的には何枚でも刷る事は可能です。版画作品の場合は予めエディション(シリアルナンバー:限定枚数)を決め、それ以上は刷りません。
Qいろいろある中で、どうしてこの版種を使っているのですか
他の版種程、実験的な驚きはありませんが、発色の良さと原画の再現性が高く、色の刷り重ねによる変化のワクワク感とスマートさが気に入っています。
版種別 よくある質問 版種「フロッタージュ(拓刷り)」
Q簡単な歴史
紙や墨が発明された頃から複写技法としてやっていたと思われますが、中国において発達し、少なくとも唐の時代から存在しています。宋の時代以後、石碑や古銅器などの文字や銘文、または文様を研究する金石学の興隆につれて発達しました。
日本でも江戸時代以来、金石・考古学者に拓本として尊重されていました。今日でも多くの愛好家がいます。
西洋では、紙や墨の発展普及が遅かったのかあまり発達しませんでした。しかし、20世紀になって、マックス・エルンストら超現実主義の画家達によって、拓刷りによるコラージュや画面構成で美術としての魅力ある絵画作品が確立されました。
Qこの版を作るときの原画からの流れ
凸凹のある原画・原版を自作、または版になりうる既存の何ものか(例えば、木・木の葉・布など)、アイディアしだいで、こすって壊れないものであれば平面に限らず、立体的な彫刻・レリーフなどでも版になります。また、色々な素材を併用して1つの「版」とすることも出来ます。
Qこの版種の刷方と仕上がりの特徴
版の上に紙を置いて、墨またはクレヨン・コンテ・鉛筆などでこすって発色できるものであれば可能です。刷る時に部分的に色を変えれば、多色刷りもできます。版の正面表から刷るので、木版のように左右が「逆転」しないで版のとおりの画像が刷りとれます。
刷りかたには、「乾拓法」と「湿拓法」があります。「乾拓法」は湿拓に適さないものや迅速を要する場合に有効です。版となるものに紙をあて、上から釣鐘墨などで紙面をこする、またはタンポ(綿を絹布で包んで丸くした大・中・小と用途に応じた大きさのものがあるとよい)にほどよく墨をつけて軽くたたきながら刷りとります。「湿拓法」は版になるもの版になるものに紙をあて、水をつけた刷毛や霧吹きなどで紙に水を含ませて、乾いたタオルやブラシなどで軽くたたきながら、版に密着させます。紙が生乾きになったところでタンポに墨をつけて軽く直角にたたきながら刷りとります。刷り終えたら、版から静かにはがして陰干しします。
Q何枚くらい同じものが刷れますか
版と同じイメージ画像として何枚でも刷れますが、細かな点では同じに刷るのは大変難しく、「一点もの」と考えてよいでしょう。
Qいろいろある中で、どうしてこの版種を使っているのですか
他の版種にない、版そのものが既存の何ものかも含め、平面・立体を問わない自由さがあり、刷りの偶然性の面白さもあります。また、版のサイズも紙を工夫すればまったく自由です。
版種別 よくある質問 版種(銅版)
Q簡単な歴史
1420年頃から作られたらしく、1430年代には、技術的・芸術的に立派な作品が残っています。場所的には、ドイツ・オランダ・イタリアのあたりらしいですが不明。はじめは、金銀細工師の手によって作られたと推察されます。腐食する方法ができてから、画家が銅版画を作るようになりました。レンブラント、デューラー、ピカソなど、偉大な巨匠も好んで制作しました。
Qこの版を作るときの原画からの流れ
銅板を切り、磨き、縁を削る(ビゾー)下絵があって、必要がある場合は、左右を逆にして写し取る。左右逆転しても問題ない場合は、そのまま彫っても良いのです。
代表的なエッチングとは、銅板が酸に溶ける性質を利用して凹部(くぼみ)を作り、この凹部にインクを詰めて、プレス機の加圧で版を刷る技法です。
グランド(腐食膜)を塗ってからニードルで絵柄を彫って腐食させると、グランド部分は腐食されず、彫った部分だけが腐食する(くぼみができる)仕組みです。彫った線を腐食させた後、凹部にインクを詰めて刷るので、凹版(おうはん)と呼ばれます。
使う道具などは、版画プレス機、銅版、グランド、ニードル、バット、腐食液、刷毛、ウォーマー(電熱器でも可)、ゴムローラー、竹製ピンセット、リグロイン、版画インク、寒冷紗、など、多岐にわたります。
Qこの版種の刷方と仕上がりの特徴
版が出来上がり、インクをのせたのちに、そのインクをしっかりふき取ってしまいます。それでも凹部に入り込んだインキを紙が吸い取るという方法なので、強い圧力の円圧プレス機がないと刷れません。紙も湿った状態で使います。紙には、銅板の縁がはっきりと引っ込みます(プレートマーク)
Q何枚くらい同じものが刷れますか
50枚くらいで、銅版の中での細かい技法によって異なります。ドライポイントなら15枚くらい、エッチングにメッキをすれば数百枚可能です。
Qいろいろある中で、どうしてこの版種を使っているのですか
凹版印刷が不思議だなと思い、ためしてみたら、出来て、感激しました。
版種別 よくある質問 版種(木版)
Q簡単な歴史
洋の東西を問わずに、印刷物の需要により生まれた木版画には、板目材に彫刻を行う板目木版と、堅木の木口面に細密な彫刻を行う木口木版 (西洋木版)があります。日本では、仏典などの印刷に始まり、世界の絵画に影響を与えた美術的価値が高い浮世絵ブームが江戸時代に花開きました。また、明治初期、木版印刷から活版印刷への移行期を迎えるまで中国と日本では、長く印刷の主流は木版印刷でした。錦絵(浮世絵)は絵師・彫師・摺師の協業によって作られますが、明治末期にはその工業作品的な立場を反省し、下絵の作成・彫り・摺りのすべてをひとりが行う(自画自刻自摺)の創作版画運動が起こり、非実用性や美術性を前面に押し出しました。戦後には棟方志功がヴェネツィア・ビエンナーレ版画部門で最高賞を獲得するなど、版画の美術的名声が一気に高まり、創作版画という言葉は使われなくなりましたが、その心が今も引き継がれています。
Qこの版を作るときの原画からの流れ
まずは、思いをふくらませて原画を描きます。何度もスケッチしたり、構図を考え抜いて、造ろうと思っているモチーフなり伝えたいことが造ろうと思っているサイズに合うかどうか吟味したり、彫刻刀などの流れや彫残すところとそうではないところを決めたりと、実際に木の板に向かうまでが長いのです。いよいよ原画を版画の下絵として完成させて、多くの場合はトレーシングペーパーやカーボン紙を使って反転させて版木に写します。
そして、三角刀や丸刀など様々な種類の彫刻刀で彫っていきます。刀の方向や長さなど特徴的なプランのある場合も何かしら思いを込めながら彫っている気がします。一版多色刷りや多版多色刷りなどの場合は、プランが一層大切になります。
Qこの版種の刷方と仕上がりの特徴
もとからある版木の木目と、彫刻刀での彫味と、墨(インクなど)と版への盛りかた(刷毛やローラーなど)、紙(和紙など)がそれぞれに作用して、木版画独特の風合いがあるものです。また、版種の中では木は柔らかい素材なので「バレンじょう」というバレンを擦るときに刷れる痕が出来たりもします。
Q何枚くらい同じものが刷れますか
小口木版ならば、500枚以上も刷れますが、板目の場合は小口より柔らかいため、版を保護する(硬くする)ためにニスを塗ることもあります。ただし、手刷りの良さというのはインクの付きやバレン使いも含めて正確には一枚一枚違い、それがコピーとは違う素敵なところだと思います。最近では、モノタイプと言われる「一点もの」も取り組まれています。
Qいろいろある中で、どうしてこの版種を使っているのですか
木が私にとって、扱いやすく馴染み深い。刷っている時もバレンなどで直に版と紙をさわっているわけで、片時も自分から離れない感覚が好きです。また、版自体の絵の具の含みも自然で、困っているときに「木目」が協力してくれることも大いにあります。どの版種でも共通ですが、刷り上がりはいつも1%以上未知数で、失敗、成功の潔さは、お相撲の試合のようだなと思う時があります。