すてきな版画を作るために
- woodcutari
- Jan 1, 2002
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すてきな版画を作るためには、すてきなアイディアとやる気が必要です。短い限られた時間の中でどこにウエイトを置くかで出来上がりの満足度も違ってきます。そこで主に小学生向けの6時間でできるたのしい木版画を紹介します。 小学校3.4年の木版画元年の児童を対象にした授業のサンプルを作ってみました。また、少ない授業コマ数でこの教材を効率的にこなすためには、1学期の図画工作活動の作品から2学期の版画のための下絵を選ぶことも有効だと思います。版画制作は作品に至るプロセスが長いため指導しにくい面も多々ありますが、反面とても 達成感のある教材です。是非これからもどうぞ意欲的に取り組んでください。
題材
1版多色刷り木版 (細かい着彩などの関係上B4以上の版木がのぞましい。また、紙は、濃い緑や赤・黒などがよい)
宿題
「働くお父さんお母さん」「大事なペット」「私の大切なもの」の3つのテーマから好きなものを選び所定の紙(B5程度の大きさで画用紙くらいの強度があるもの)に家で鉛筆で3枚スケッチしてくること。必ず部分でもいいので人物をいれること、そして子供たちに「好きなんだ、大事なんだ、大切なんだ、えらいんだ」というよ うな特別の感情をもちながらスケッチすることを教える。本授業までの休み時間などに3枚のうちから1枚えらび版木の大きさに先生が拡大コピーしておく
先生の試作用ではご自分のたからものをハガキサイズにサインペンでスケッチし、 それをコピー機でA5に拡大し2部コピーしてご持参ください。 たからものはお子さんや時計などなんでも結構です。
1時間目 版画ってなあに
教科書や去年の版画コンクールから魚拓・拓本・木版画・銅版画など+ミクストメディアの版画などをピックアップして紹介する。そのときに使われる道具などを実際に示すと子供のやる気が出る。また、予め先生が手順に沿って作品を制作し生徒に見せること。今回は、彫ったところが黒で出ることや様々な裏技を披露する。1 版多色刷りのウィークポイントは、絵の具の濃度にあるのでこの時点で研究しておくこと
この講義実習を通して生徒向けの版画の流れのサンプルを作ることができます。

色々な版画のテキスト・彫刻等・バレン・ニードル・銅版・印鑑・ステンシル・先生の作品(下絵コピー・トレーシングペーパーの下絵・カラー計画コピー・作品)
2時間目 下絵
下絵の拡大コピーにトレーシングペーパーをあて、両サイドをセロテープなどで固定し、彫刻刀では彫りにくい線をはぶいたり強調したりして版画に適した原画を作る。今回は、主にアウトラインと影の部分に分けて考える。
トレーシングペーパー・セロテープ・鉛筆(HB.B)など 鉛筆削り 原画の2倍コピー1枚 |
出来上がったトレースを裏返して版木に合わせ、ずれないようにセロテープなどで固定する。トレーシングペーパーが破れないように、バレンで強くこすって版木に下絵を写し取る。
版木・トレーシングペーパー・セロテープ・バレン |
3・4時間目 彫り
彫刻刀の扱い方などの説明をする。また、その他のくぎや目打ちなどを使った技法も教える。どの向きで彫れば効率的かなど主に三角刀の指導をすること。 彫刻刀は、良く切れるものを用意すること。
良く切れる彫刻刀・特に三角刀・彫り始めアドバイス用の掲示物・彫刻版・彫刻版の利用方法の掲示物 |
アウトラインを主に三角刀で彫る
その他の技法を施す。毛糸などの面には、速乾性の木工ボンド+竹ひごでマチエールをつけたり、影の部分をくぎで傷つけたり、目打ちで引っ掻いたり、くぎの頭などで模様をつけたり。ただし木工ボンドは、必ず板面が乾いていてボンドも予め皿などに出して薄く使用すること。 かなづちを使用する場合は、気合を入れ過ぎて打たないこと。版面を壊したらおしまいです。

先生の試作では、場所を分けて次の技法を施すこと
影の部分を釘で傷つける
目打ちで引っ掻く
釘の頭などで模様をつける
速乾性のボンド+つまようじで模様をつける(要ドライヤー)
くぎ・木槌・かなづち・目打ち・速乾性木工ボンド・つまようじ・彫刻刀・ドライヤー |
5.6時間目 刷り

刷りは、版木に黒画用紙(丈夫なものがbetter)をしっかり巻きつけ裏面をガムテープで固定すること。また、版木裏面3箇所に練りけしの粒を乗せ版木がずれたり、滑ったりしないように固定する。
黒画用紙・ガムテープ・版木・練りけし |
乾くと耐水性になるポスターカラーなどを、大きな筆かローラーで一気に乗せバレンで刷る。 色がきれいに出るための下刷りです。 これでモノクロの画面が出来上がります。 顔料は水性の普通のポスターカラーとリキテックスなどのホワイトを、 3対1くらいの割合で混ぜて先生サイドですぐ使える状態に調合しておくこと。 耐水性の絵の具が高価で用意できない場合は、木工ボンドなどを混ぜると良い。 この段階の刷りは「ごますり」状態がのぞましい。
先生の試作では、下刷りは、サンプル用に2枚刷る
顔料・はけ・筆・バレン |

下刷りが終わったらすぐに版木に残った絵の具をぼろきれ等でふき取ること。さらに筆に水をつけて丁寧に版木をふき取っておく。コピーの下絵に色鉛筆などでカラー計画をたてること。
ふき取りよう布・筆・水入れ・カラー計画用色鉛筆・2枚目コピー |

下刷りが乾いたら2枚目のコピーのカラー計画に従って、水彩絵の具などで1色づつ刷っていく。 このとき濃度が薄いとはじいてしまうので、薄い色をつけたいときにはやまとのりなどを混ぜると良い。 色は必ずガムテープの貼ってある側の奥からはじめる。 手前はずれが生じやすいので、最後のほうにしておくときれいに仕上がる。 また、必要に応じて版木に残った絵の具はふき取る。
筆・絵の具・やまとのり・バレン・パレット・水入れ・布 |
下絵3枚+カラー計画済みのコピー+作品+この題材を選んだ理由と制作上の自分なりのポイントを紙に書く+先生の感想・合評
低学年への応用
彫りの前段階まで同じくして「教材用色紙版画」や 水性絵の具に浸して乾かしたレースや ひもなどでモザイク状に画面に貼り付け(この場合スティックのりが有効)、 よく湿らせた画用紙を乗せてバレンにポリ袋をかぶせたもので一気に刷る。 版に水性ビニール系の塗料を塗り、次の時間はインキをのせて刷ってみるのも面白い。 (カラー刷りとモノクロ刷りの両方ができる) この場合、色つきレースやひもなどは教師が教材を作る。 また、ビニール系の塗料も教師が塗る。
高学年への応用
版木を2版使い、 1版は彫刻刀のテクニックを駆使し、 もう1版はその他のテクニックで1つの作品を作ってみると、より深みのある作品ができる。 2版多色刷りあるいは、2版1色刷り