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すてきな版画を作るために3

  • woodcutari
  • Jan 1, 2004
  • 15 min read

Updated: Jun 14

 すてきな版画を作るためには、すてきなアイディアとやる気(動機)が必要です。かぎられた時間の中でどこにウエイトを置くかで出来上がりの満足度も違ってきます。そこで主に小学生高学年向けの13時間でできる「やりがいのある木版画」を紹介します。

 小学校5.6年の思春期もしくは寸前の児童を対象にした授業のサンプルです。また、少ない授業コマ数でこの教材を効率的にこなすためには、総合学習の素材として採用するのも大いに有効だと思いますし道徳の時間も使用可能と思われます。版画制作は作品に至るプロセスが長いため指導しにくい面もありますし今回のサンプルは担任の日頃の学級経営がうまくいっているかという点で全体の仕上がりに影響 を与えるでしょう。しかし作業を通じての信頼関係や発見・ワクワクの共感は必ず作品に反映され見る側に感動を与えると考えています。

 

 

題材

君のなかの君、ぼくのなかのぼく」     1版2色刷り木版画

まずは現在の自分を知り、それをふまえてモデルとなる友達をより知ることによって

内面がにじみ出るような作品を目指す

・絶対に他の人と同じ絵にならない

・淡い色が彫りの効果をはっきりして見せてくれるとともに重ね刷りによって心象表現が深まる

 

 

授業の流れ  

1時

まずは自分をしる

自分を見つめる 

2時

友達を知り、作品を作るためにアイディアをしぼる

ペアを 組む友達を取材する. 5・6人の班に分かれて人物以外

のモチーフやポーズなどのアイディアを出し合う。

3時

クロッキー

 

それぞれのペアでモチーフも一緒に5分交代でクロッキーを

3ポーズする。

4時

アイディアの推考

班で3ポーズのうちどれが友達らしいかアドバイスしあう

5時

下絵 

ペアでアドバイスもふまえて10分交代で下絵を作る

6---7時

下絵の仕上げと彫りのイメージをつかむ

 

下絵は教師がトリミングや線の処理などを指導し、イメージにあ

った色を決める。反転させてコピーを2枚取り、コピーを版木に貼り付ける

8--11時

彫り・ためし刷り・彫り

 

貼り付けたコピー用紙に彫りのながれなどを 赤鉛筆で入れてか

ら彫りすすめる。

12時

本刷り

はじめは薄い色刷りで刷り 重ねて黒でする。

13時

発表・感想

班で一言感想を 言ってもらい、自分でも感想をまとめる。

 

1時間目

自分さがし 授業形態:通常


準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 のための自分さがし

プリント 詩「ぼくのなか」と自分のプリントを人数分・色鉛筆・鉛筆  

あらかじめ書き入れた2倍の大きさの教師自身のプリント

 

詩の朗読 をヒントにさまざまな自分の一片を知る。具体的に書き出した一片を おもうがままに抽象的表現で書きなぐらせる。 さらに自分の気に入った気持ちの一片に色鉛筆で2~5ヶ所一色選んで塗らせることにより気持ちの強調をわかってもらう。

 

簡単な授業の流れを説明してからプリントを配る

詩の朗読 ゆっくり2回


ぼくのなか

ぼくにはぼくとしての何人ものぼくがいる

バスの中で倒れそうだったおじいさんに勇気を出して席をゆずったのもぼく

けんかした後兄ちゃんの味噌汁にこっそりつばを入れといたのもぼく。

がまんして100マス計算を自力で仕上げたのも、そして回答を丸写ししたのもぼくだった。

自動操縦でいいぼくでいるときもあるし、やんちゃでしっぱいするぼくでもある。

マニュアル操縦なのに後になって後悔してしまうようなときもいっぱいある。

ゆかいで親しみやすいぼくなのに 

ずるくて乱暴できたなくて 

そんな自分を脱ぎたくて

かっこういい僕だけになりたくて

一ヶ月に1度くらいもがいている

夢のなかで

 

さぁ、自分の中の自分ってなんでしょう。これからみんなにはそのことについて考えてもらいます。 (15分)

・けっこう気に入ってる自分はどんなとき?

・けっこう気に入っている自分はどんな人?

 

・気に入らない自分はどんなとき?

・気に入らない自分はどんなひと?

 

先生も考えてみましょう  6分過ぎあたりに担任も発表する

けっこう気に入っている自分はどんなときか?

天気のいい日に目覚まし時計じゃなく自然にめざめて家族に明るくおはようを言えるとき。仕事がどんなに重なっても集中して責任を果たせるときやその自信があるとき

けっこう気に入っている自分はどんな人?

やさしい。すぐに行動できる。いろんなアイディアがつまっている。絵を描いたり踊りを踊ったり料理がうまい。親しみやすい。勇気がある。たいてい喜んでいる。

気に入らない自分はどんなとき?

仕事が忙しすぎると機嫌が悪くなる。家族に悪態をつく。掃除しない。疲れると目つきも悪くなり思い通りにいかないと汚い言葉を使う。

気に入らない自分はどんなひと?

恥知らず・ものすごくわがまま・なんでも自分優先・だらけているのを楽天的と勘違いしている。


次に下の四角にそのイメージを殴り書きしてもらう。格項目30秒程度で1こまづつ時間を切る。

「さあ、それではプリントの四角の部分に言葉ではたりなかった気持ちを鉛筆で描きましょう。直線や曲線などを使って頭の中で「気に入ってる自分、気に入ってる自分」とつぶやきながらしっかり目を あけてかきます。先生が何を 言ってるのかわからないと困るのでちらっと先生のを見せますね。ちらっちらっ!! 要するに赤ちゃんの殴り描きみたいなものです。決して消しゴムは使わないようにしてください。 時間は30秒です。ハイ、はじめ! ストップ!  はみだしても気にしないでね。それでは気に入っているときに移ります。・・・・・・・・・・・・ハイ、はじめ! ストップ! これを繰り返す。 

 

隣同士でみてごらん。気に入った感じや気に入らない感じが出てるでしょう。不思議だよね。人間はこんなふうに物事を抽象的に表現することができて、そして感じることができます。 きょうは、みんなが30秒で集中して描いた4つの抽象画も立派な絵画なのだということを 覚えておいてくださいね。 

そして芸術の答えは見る側の自由だということを教える。  

彫刻刀も筆や鉛筆と同じで彫る勢いやその方向が全体の出来を左右する。ここで感覚として鉛筆で学習しておく

授業のまとめにて「大人になった先生はそんな一片一片も自分の一部なんだとかんじるようになったことを話す。 

もちろん今もたまにそんな自分にもがいているが反省しほめるときには自分をほめられる人間になりたいと思っていると。また、教師は出来るだけ早くプリントにひとりひとり励ましの感想をかいて返却すること

予告:次週は実際にペアを組む相手をより知るために取材し班で友達らしいポーズなどをアドバイスしあいます。

 

2時間目  

友達をしる 授業形態:班 教師はあらかじめペアを決め班を作ってグループで座らせる。

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 友達を知り、作品を作るためにアイディアをしぼる

プリント 「君のなかの君」・はがき大の穴の空いた厚紙を2人に一枚程度

「君のなかの君」制作資料        組       番        氏名

 

友達の名前(                      ) さん

1.     好きな教科はなんですか

2.     趣味はありますか

3.     ペットはいますか 猫と犬ではどっちがすきですか

4.     最近はまっていることがありますか

5.     得意なことは何ですか

6.     将来何になりたいですか

7.     季節では何が好きですか

8.     色では何色がすきですか、自分のイメージの色は何色だと思いますか

9.     動物でいうと何だとおもいますか

10.  お菓子でいうと自分はなんだとおもいますか

11.  その他

 

友達を取材してあなたはどんなイメージを持っただろうか? どんな場面の友達が一番それらしいだろうか? どんなポーズがふさわしいだろうか?

これから皆さんにプリントを配りますのでペアになっている人に取材してください。また、これは「君のなかの君」のための取材なのでお互いに協力しなさいね。(取材20分)

 

取材を一応ストップします。 次にどんな場面が友達にふさわしいか考えて書きなさい。 例えば○君はサッカーの選手でとってもうまいとするとジャージ姿かユニフォームでサッカーボールを蹴ってるとか、○さんは理科が得意なので顕微鏡をのぞいているとかということです。 考えがまとまった人もそうじゃない人も人物以外のモチーフを想像して班でアイディアを出し合ってください。

教師ははがき大の穴の空いた厚紙を配りながら 子供たちのアイディアを足したり引いたりする。また、はがき大の穴をのぞくことにより色々な角度からみた人物の面白さも教える。(20分)

 

まとめと予告 次週はいよいよ下絵用のクロッキーを書きます。 今日の取材をふまえてその他のモチーフなど学校から借りるものがあったら先生に相談してください。 それ以外のものは友達同士で協力しあって持ってきてください。 

 

3時間目

クロッキー 授業形態:机をさげた状態の班形式 

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 の君のイメージ

先週のプリント・モチーフ・2B程度の尖がっていない鉛筆・画板・画びょう・ストップウォッチ・穴の空いた厚紙 

クロッキーの見本・B5くらいのクロッキー用紙 

*4時間目と連動するのでなるべく2時間続きの授業がのぞましい。

今日はクロッキーをします。 クロッキーとは一番最初の授業で書いた抽象画のように人物を良く見ながらすばやく紙に書き留めるやり方をいいます。 この間と同じように消しゴムは使わないこと。無駄な線が出てもへんな顔になっても気にしないでぐりぐり何度も線を重ねて描きます。(見本をみせる) ペアのどちらが先にモデルになるか決めてモチーフを配置してこれで(穴の空いた厚紙)でだいだいの描く範囲を頭にいれて書いてください 。それでは5分づつ交代です。ハイ! はじめ (1ポーズ目、ペアで10分)

 

次はポーズをかえたり見る角度を変えてクロッキーしてください。(2ポーズ目、ペアで10分)

 

次はポーズをかえたり見る角度を変えてクロッキーしてください。(3ポーズ目、ペアで10分)

 

4時間目

アイディアの推考 授業形態:机をさげた状態の班形式 


班で自分の書いたクロッキーを見せ合い、どの場面が一番友達にふさわしいかアドバイスしあう。また、どこが余分でどこが足りないかなども含めてクロッキーの下にメモする。このとき自分なりに友達のこのポーズやこの場面にふさわしい色(淡い色ではあるが・・・)も考えてメモしておく。 教師も後ろ向きにならないように明るくまじめに自信を持たせながら構図についてアドバイスする。

 

まとめと予告  次週は本格的に下絵に入ります。 今日の格好やモチーフを忘れないこと。

 

5—6時間目

下絵作り 授業形態:机をさげた状態の班形式 

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 の君のイメージ

先週のプリント・モチーフ・2B程度の尖がっていない鉛筆・トレーシングペーパー・セロテープ・ストップウォッチ・穴の空いた厚紙・先週のクロッキー ・画板・画用紙

*画板に画用紙をセロテープで貼り付け、その上に厚手のトレーシングペーパーを全辺セロテープで貼り付ける。

先週まで十分に自分がこれから描く友達についてクロッキーも含めて取材できたとおもいます。 これからする下絵づくりは直接木に彫る部分なのかどうなのかを左右する重要な部分です。まずはみんなの書いた取材プリントと選ばれたメモつきのクロッキーに目を通して頭に叩き込んでください。 (3分くらい) いいかな?  

 

それでは最初のモデルは位置について・・・・今日はクロッキーではなくまったく逆の「カタツムリの描き方」でいきます。 クロッキーを頭においといてモデルからほとんど目を離さずにゆっっくりゆっくり描きます。クロッキーではないのでまつげの一本一本や洋服のしわなども描きます。 ではモデルは用意して・・・・・10分交代です。ハイはじめ

 

教師はタイムキーパーをしながら先週のクロッキーと照らし合わせて個別にアドバイスをする。1時間でせいぜい2ポーズしかできないので 次週の1時間もこれにまわすと良い。

 

30人として一人1分しか取れないので作業の早い生徒にはこの2時間でトリミングの指示を与える。

 

7時間目

下絵の下絵の仕上げ 授業形態:通常 or 班形態 

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 の君のイメージ下絵の仕上げ

先週のプリント・モチーフ・2B程度の尖がっていない鉛筆・トレーシングペーパーの下絵・先週のクロッキー・画板・画用紙・コピー機・版木・スティックのり・バレン・はさみ

 

今日はまだ先生にトリミングを見てもらってない人は見せにきなさい。 トリミングの合格が出た人は破かないようにトレーシングペーパーを画板からはがしてトリミングどおりカットします。 コピー機に裏返しにトレペをおいて2枚コピーしなさい。 版木の大きさはこれです。 これにあわせて拡大しなさい。 (職員室から運べない場合はどなたか先生に協力してもらう) 

 

コピーをとった人は版木を1枚とってスティックのりを全面にまんべんなく塗ってコピーをはりつけます。 貼り付けた後軽くばれんをかけてノリのよれがないようにします。 そこまで出来たら鐘がなるまでもっと太くして強調する部分や白く抜く部分に彫りの流れを矢印で入れたりしなさい。

 

教師はこの時間にも上記の件個別指導する。これで時間が足りない生徒は休み時間などを利用して下絵の推考を進め、彫りの作業計画を立てさせる

 

8-10時間目

彫り  授業形態:通常 or 班形態 

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 彫り

先週のプリント・下絵付の版木・彫刻刀・彫刻版

 

いよいよ彫りに入ります 。ポイントは友達の名前を頭の中でこだまさせながらとにかく一生懸命彫るということです。 

気持ちが自然に手に伝わってよい彫りができます。 

彫刻刀の持ち方や彫刻版の使い方のおさらい

残したい硬い線とやわらかい線の話。 

やわらかい空間の表現 平刀でのぼかし方法など

基礎事項をざっと抑えて後は個別に実践して見せながら指導する。

 

11時間目

ためし刷り・彫り・刷り 授業形態:通常 or 班形態 刷り場所の確保

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 ためし刷り・彫り

先週のプリント・下絵付の版木・彫刻刀・彫刻版・大ハケ6本程度・バレン・必要な絵の具・刷紙・雑巾

 

自分で決めたイメージの色でためし刷りさせる。3枚くらいは刷っておく。

刷り上りを良く見ながら余分に付いた絵の具か版木が彫りきれていないのか判断し再度彫る。

彫りの微調整が出来た人は一版目の薄色で3枚ほど刷っておく。 版は洗い雑巾でよく拭いて平らなところで乾かす

 

12時間目

刷り 授業形態:通常 or 班形態 刷り場所の確保

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 本刷り

先週のプリント・下絵付の版木・彫刻刀・彫刻版・大ハケ6本程度・バレン・必要な絵の具・刷紙

 

ローラーで黒インクを載せて 色刷りした紙に重ね刷りをする。ローラーのむきやインクが波打たないように濃度も調整する。心持ずらしてするとおもしろい。

 

13時間目

発表・感想 授業形態:班 

 

準備物・板書・・・・版画制作 「君のなかの君、ぼくのなかのぼく」 発表・感想

先週のプリント・トレーシングペーパーの下絵・クロッキー・作品・今週のプリント

 

一人ひとりが「君のなかの君」を刷りの最後まで意識できたかな? それでは班ごとに班長さんが司会をしてみんなの作品を鑑賞しあい、簡単な感想をつたえてください。教師は各班をまわり盛り上げる。(25分)

 

最後にプリントを配りますのでモデルとなった人から友達へ作品について一言、制作した自分は自分の作品についての感想を書きなさい。




講習当日

 

あいさつ

本日の講義の流れを説明・・・・動機を濃くすることがよい作品につながる。きょうは、版画の技術そのものよりいかに動機を濃くしていくかをいっしょに体験してほしい

15分

 

「僕の中・・・」のプリントを配り自分をみつめる授業・・・・プリントにそって、先生たちにかきこんでもらう

15分

 

「クロッキー」 日専連から3人モデルを出してもらい・・・自分らしいふくそう & 小道具やポーズをきめる。

やり方は、レジメ参照 (モデルはあらかじめ取材プリントに書き込みをし、ナカムラまで提出してください)

当日のこの時間にかいつまんで発表し、モデルを描くてがかりにしてもらう。

20分

 

「下絵づくりとかたつむりの描きかた」 クロッキーとはまったく対照的な描きかたでより心象をふかめる

日専連から3人モデルを出してもらい・・・自分らしいふくそう & 小道具やポーズをきめる。

やり方は、レジメ参照

30分

 

モデルをやる人は9/5までにハガキ大のじぶんのスケッチをアリまで提出し、それをトリミング・・コピーして版下の材料をナカムラサイドで作成→ できたら日専連サイドに渡して当日の資料として先生たちに配布。

 

元本1→ トリミング2→ 拡大コピー3→ 修正3→ 方向付け4→・・・・・合計4枚のプリント×3にんのモデルぶん

ナカムラサイドで1点選び  (資料1)

 

コピー1 → のりづけ版下→ 彫ったもの→ はがしたもの→ 淡いいろだけの刷り・黒だけの刷り・ミックスの刷り

を制作・・・・拡大コピーして当日発表 (資料2)

20分

 

まとめ・質問

20分


当日前の準備

モデル選び・・・モデルはアンケート書き込み & ハガキ大のじぶんのスケッチ

それらをもとに資料1を作り、日専連へ・・・人数分資料としてコピー

資料1から1人ピックアップして資料2を作り、日専連へ・・A1に1部づつカラーコピーして当日ホワイトボードに掲示する

当日

マイク・モデル・レジメ・資料1・資料2・4B程度の鉛筆人数分・クロッキー用B5用紙各自に三枚・かたつむり用用紙各自に一枚・(バレン・スティックのり、ナカムラ使用分一組)

先生準備物

消しゴム・・・できれば参加者にはあらかじめ今回のレジメを読んでいてもらいたい。

 

Ⓒ2025 Ari Nakamura. 

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