ひとりぼっちの女の子
- Ari Nakamura

- Jan 1, 1994
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Updated: Nov 30

小さな緑のお家に、ひとりぼっちの女の子がいました。女の子は猫も犬もかっていませんでした。女の子にはお母さんもお父さんもいませんでした。女の子には兄弟も友達もいませんでした。女の子には言葉を教えてくれる人もいませんでした。歌を教えてくれる人もいません。でも女の子は待っていました。いつかきっと、こうしてじっとしていると、誰か何かがやってくることを。
女の子は小さなあくびをしながら目をつぶりました。すると窓から北風がやってきました。北風は小さなお家の中を、ヒューと一回りしてから、女の子の手の上に乗りました。北風は女の子の手をそっと冷やしました。女の子ははっと目を開けました。手の中にくるくる回る冷たいものを感じたのです。女の子は言葉を知らなかったけれど、心の中でこうたずねました。
「あなたなの?私の待っていたのは?」
そうしているうちに、北風はどこかへいってしまいました。でも女の子の心は、少しうれしくなりました。
次にハエが一匹飛んできました。女の子はびっくりして立ち上がりましたが、ハエのブンブンいう音がとても素敵に感じて、ひとりブンブン言っていました。ハエは女の子の肩にとまりました。女の子はまた心の中でたずねました。
「あなたなの?私の待っていたのは?」
ハエは手をもぞもぞやりながら、そっと飛んでいきました。女の子はもう目を閉じません。ブンブンブンブンと言いながら、さっきよりもうちょっとうれしくなりました。
するとお日様がちょうど窓から入ってきました。黄金のひかりとビロードの暖かさを、女の子は感じました。お日様は優しく朗らかに笑っています。女の子はとてもうれしくなりました。
「あなたね。あなたね。私がずっとまっていたのは!」
女の子はにこにこ笑って、ドアを元気に開けると、駆けていきました。どこまで行ったか、誰と会ったか、もう誰も知りません。
だって、女の子はとても幸せそうに、駆けていってしまったのです。
