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Gallery Ari

Pacific Rim Art Now 2003

  • woodcutari
  • Aug 1, 2003
  • 7 min read

Updated: May 11



プロローグ展

2003年8月19日(火)~8月24日(日)

AM 10:00~PM 6:00(最終日はPM 5:00まで)

コンチネンタルギャラリー

 札幌中央区南1条西11 コンチネンタルビルB1

 TEL. 011-221-8511

■ オープニングレセプション:8月19日(火)PM 6:00~

  コンチネンタルギャラリー内


本展

2003年8月26日(火)~8月31日(日)

AM 10:00~PM 6:00(最終日はPM 5:00まで)

市立小樽美術館3F市民ギャラリー

 小樽市色内1丁目9番5号

 TEL. 0134-34-0035

■ オープニングパーティー:8月26日(火)PM 6:30~

  ROYAL PERFORMANCE "BBC"

  小樽市色内2-2-22 TEL.0134-22-9363

■ スライド講演会:8月26日(火)PM 4:00~

  サンタクララ大学芸術学部教授 ケリー・デットワイラー氏

  「カリフォルニアART NOW」他

■ ワークショップ:8月30日(土)PM 2:00~

  「楽しいコラージュ」講師 佐々木 徹 他


アメリカ展

2004年7月15日~2004年8月14日

WORKs Gallery

 30 North 3rd Street San Jose California

■ レセプション:2004年7月16日

■ 講演会:2004年7月22日


■ 主催 / Pacific Rim Art Now 2003 実行委員会

■ 共済 / 財団法人北海道文化財団

■ 協賛 / 伊藤組100年基金

■ 後援 / 小樽市・小樽市教育委員会


国際展は文化のレジュメを鮮明にする

吉田 豪介


 1991年から始まっている「パシフィック・リム・アート・ナウ」展は、小樽では数少ない国際展の一つで、今回で5回目となり、その実績が評価されている展覧会でもある。


 企画を推進しているのは、井上義江、江川光博、角野由和、ナカムラアリら小樽在住の画家たちと、大瀧憲二、柿﨑熙、国松明日香ら札幌在住の造形作家たちで、毎回アメリカ西海岸に住むアーティスト数人の招待をハイライトにしている。そして今回の参加者は、日本側で前記委員のほか佐々木徹、佐渡芙二夫、中丸大輔、日野間尋子、山田恭代美、吉岡まさみ。アメリカ側からは、もう顔馴染みであるケリー・デットワイラーはじめ、ドン・フリッツ、ルーク・バートル、スーザン・フェルター、デビット・ピース、シーン・ボイルズが加わり、総勢で19名となっている。


 さて出品作品だが、日本側では大半が抽象系の表現形式を採っている。それらの創作活動を一まとめにして語ることは当然困難だが、たとえノン・フィギャラティフへ傾斜していても、イリュージョンまで拒んでいる作品は見当たらない。ある作品では、色彩を選ぶ姿勢や動勢を感じさせるタッチに、どこまでも広がる大空や爽やかに流れる風を感じとることは容易だし、日々の心情の起伏や感応を、個人の無意識層から浮上させようとしたり、社会批評的な視点で検証したりする作品もある。また造形作品においても、水の流れや種子の飛翔を連想させる表現傾向を、指摘することは難しいことではあるまい。


 一方のアメリカ側は、これまでの傾向として、ポップでファンシーな作品が主流であった。西海岸での日常生活を表徴するようなモチーフがたっぷり積み重なっていて、乾いたユーモアと少しシニカルな味付けが魅力であった。多分今回も、まさにカリフォルニアの明るい日差しと涼しげな風を活き活きと運び込んで、会場を賑わせると思われる。


 この国際展において、見る側は、太平洋をはさんだ二つの文化のレジュメ(概要)の相違を、さらに個々人の創作活動におけるアイデンティティーのあり様を、明瞭に感じとることになろう。私は一例として、一方には自然への共感が濃厚にあり、一方は人の暮らしが主題となっていることを指摘したが、もう一つは、佐々木徹と、D・フリッツやS・ボイルズらの、それぞれの現代社会へ向けた視線の違いを早く見てみたいと思っている。つまり作家の背景に横たわるきわめて個人的な歴史や価値観の違いは、日々に更新していて、作品をじかに比べてみることでしか、深く理解できないであろうと感じているからだ。


 時代は美術動向を絶え間なく革新させていく。20世紀中葉にアメリカ東海岸で興った抽象表現主義は、たちまち全世界を席巻し、美術評論家クレメント・グリーンバーグの唱える「平面性とその平面の限定性。この二つの基準さえ順法すれば、絵画として体験できるものを十分につくることができる。」がまるでバイブルになった。図像も象徴も、イリュージョンさえも否定され、60年代にはフォーマリズムやミニマリズムが旗印となった。


 しかし世紀末に出版されたヴァーノン・ハイド・マイナー著「美術史の歴史」では、ノーマン・ブライソンの「解釈の作業を経ずして絵画を見る人は存在しない。」という見解を紹介しながら、マイナーは、抽象表現主義であろうとも、わたしたちはどうしても絵を「読まず」にはいられないと、グリーンバーグの引き算を批判的に捉えている。


 現在、世界の美術動向はさらに素材や展示形式を拡張し、今や物質と形式という美術の基本要件の存在さえ脅かされはじめている。情報化社会が過度に成熟してヴァーチャル・リアリティー万能の時代を迎え、ハイデッガーのいう芸術の条件「真理が出来事となって出現する作品の衝撃性」など忘れ去られてしまうのではないかと、私は少し心配している。


よしだ ごうすけ

美術評論家/市立小樽美術館長


パシフィック・リム・アート・ナウ2003

ケリー・デットワイラー


 今から20年近く前、サンタクララのトライトン美術館で、日本のアーティストたちによる展覧会が行われた時から、北海道とカリフォルニアのアーティストたちの関係が始まりました。その数年後、札幌の北海道近代美術館で行われたふたつの展覧会―「アート・ドキュメント」と「北海道現代作家展」に、アメリカから数名のアーティストが招待されました。このふたつの展覧会を通して、日米アーティストたちの間に関係が築かれ、現在のパシフィック・リム展へと発展してきたのです。トライトン美術館やデ・サセット美術館、アプライド・マテリアルズ、サンタクララ大学美術学部ギャラリー、サンノゼ現代美術館で、日米が共催してきた展覧会は、アメリカの人々に、日本の優れたアーティストの作品に触れる機会を与えました。そして今回アメリカでの開催地となるのは、老舗であり、サンノゼでもっとも注目を集めているギャラリーのひとつ、ワークスギャラリーです。このギャラリーは、アート界のさまざまな動向のなかで、いつも活気と柔軟性があり、今でもサウス・ベイ・エリアのオルタナティブな、若いアーティストたちにとって最も重要なギャラリーといえるでしょう。過去25年間のワークスギャラリーの運営者を見れば、サウス・ベイ・エリアのアート・シーンにおける重要人物が分かりますし、ギャラリーの歴史の長さは、この地域のアーティストたちによるコミュニティがどれほど強力であるかを物語っています。


 日米アーティストたちの協力と友好関係は、長く、実り多いものでした。私たちはこの関係を通して、それぞれの文化の独自性を、異なった方法で表現することを、認めあえるようになりました。そしてその表現方法は、一見かなり違いますが、実はそれほどかけ離れていないのだと分かるようになりました。そうした違いはアーティストたちに、お互いの作品を理解し、評価するための対話を可能にする、独特のヴィジョンをもたらしてくれます。インターネットが普及し、より早く情報を集められるようになって、世界は小さくなり、私たちはかつてなかったような方法で、お互いの作品について語ることができます。私たちはアーティストとして、異文化を理解し友情を育んでくれるような、アイデアやイメージを交換できるのです。


 私は1988年に初来日して以来、こうした交換に参加し、多くの日本のアーティストと友人になれたことは、とても幸運だったと思います。この展覧会を実現させてくれた、日本の主催者たちと、ワークスギャラリーの運営者たちに感謝いたします。もちろん、この交換に貢献し、私たちが今回ふたつの展覧会で鑑賞する作品を制作してくれた両国のアーティストたちにも感謝します。また、市立小樽美術館と、アーティストたちの関係がずっと繁栄し続けるように、時間や労力、援助を惜しまなかったたくさんの人々に感謝します。そして私は今回のこの交換を、展覧会には参加できませんでしたが、日本のアーティストたちが持つ強さと独創的なヴィジョンを、自ら私に教えてくれた、一原有徳さんに捧げたいと思います。


ケリー・デットワイラー

サンタクララ大学美術学部教授

翻訳 岸井 千

Ⓒ2025 Ari Nakamura. 

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